屋上の落書き


 

PiPiPiPi

携帯の音が鳴った。

「あっ。ごめん。」

私ではなく、永沢の携帯だった。



しばらくして、永沢が戻ってきた。

「っじゃ、友達に呼ばれたからいくなっ。」

「うん。じゃあね。」

「おう。じゃあな。あんま、ため息つくなよ?」

永沢はそう言い残して公園をでていった。


それから、私の頭の中は永沢でいっぱいだった。

それは、最近誰とも話していなかったからだと思った。

久しぶりの会話がとても楽しかったからだ。


家に帰って、ご飯を食べているときも、

お風呂に入ってるときも、ベットに入ったときも。

頭の中は永沢のことだけ。


そんな生活が何日も続いた。

そして、ときどき永沢には公園で会った。

はじめてあったときは少ししか話し出来なかったけど、

時には、何時間も話したりした。

それはすごく楽しくて、まるであの夢でみたような世界だった。


一方、屋上には3日に1回くらいのペースで行っていた。

凪の【あなたは誰?】という質問に対しての答えはなかった。

だが、男の子の絵はいつのまにか笑顔になっていた。

まるで、その人の感情を表しているかのように。

そして、お互い落書きをしながら友達のこととか好きな人の事とか

いろいろ相談しあった。

その人には、好きな人がいるらしい。

【気になってる人がいるけど、どうしたらいいか分からない。】

そう書かれていたから。

【気になりかけてから、まるで俺が俺じゃない見たい。】

【笑顔がかわいい奴。でも、どこか寂しげなんだよな。】

そんなことも書いてあった。

笑顔がかわいい人。どんな人だろう?って想像したりもした。

そして、凪も

【私もいるよ。気になる人。私の事どう思ってるかわかんないけど。】

って書いた。

もちろん、永沢のこと。

【大好きになっちゃった。私に元気をくれるし。】

そう書くこともできた。

唯一、自分に素直になれる場所だから。

【お互い、両思いになれるようにがんばろ!!】

そんな話をしてるころ、落書きのよこの男のコは、

まるで恋でもしたかのように微笑み、頬が赤くなっている様子に変わっていた。

この人、本当にその人の事が好きなんだなって思えるくらい。

そんな今までにない楽しい生活をしていたある日。

凪は熱を出してしまった。

「はぁ。やることなくて楽しくないな・・・・。」

そんな独り言もつぶやきながらベットの上にいた。


pipipipi

突然、凪の携帯がなった。

暇でもう一度寝ようかと思ったときだった。

慌てて、携帯をみると永沢からだった。

うれしくて、なんともいえない気持ちになった。

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To, 凪

風邪大丈夫か?!?!
いつも元気なのに、いき
なり風邪ひいたっていう
から、まじ心配↓↓
電話してもいい???

From, 永沢

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永沢が心配してくれたのかと思うと、

どきどきが止まらなくなった。

もちろん、電話したい。

メールを返すのも忘れて、

私はすぐに永沢に電話した。


「もしもし?」

「あっ。もしもし?永沢?」

永沢の声を聞くととても安心した。


「えっ!雨宮、大丈夫なのかよ?」

「ゴホッ。大丈夫だよ!」

「よかった〜〜。」

永沢のそんな言葉を聞いて、涙が出そうなくらいうれしかった。

「そだ。あのさ、下降りてこれる??」

「えっ?下??」

「今、おまえの家の下にいる。」

「うそっ!」

なんで、永沢が凪の家をしっていたのかは分からないが、

そこにいると聞いただけで、凪は顔が赤くなったのが

鏡をみなくても分かった。


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