愛しすぎた少女(Y)


 

私と同じ目に。

この少女と同じ目にあうということなのか。

最近は、意味がわからないメールが多い。


でもやっぱり、歌凛とお母さんの死にはあの少女が関係している。

怖い・・。

『そばにずっといるから。』

お父さんはそう約束してくれた。

でも、歌凛とお母さんに続きお父さんまでどこかへ連れて行かれそうだ。

そんなのは絶対いやだ。

家族が大好きだった私にとって、歌凛とお母さんの死は人1倍かなしいことで、

お父さんまでもが死んでしまうのではないかと考えるだけでも、胸が張り裂けそうだった。



それから2週間。学校へはまだいっていない。

2人の死のショックで、眠れない夜が続いた。

だが、お父さんの励ましもあって3週間目の月曜日には学校へいった。

不思議とその2週間はあのメールが来なかった。



「鞠絵。大丈夫??」

「うん・・・。」

「悲しいのはわかるけど、歌凛ちゃんとか鞠絵のお母さんのためにもがんばろう。」

「そうだね。うん。がんばるよ。」

やっぱり、祐希が励ましてくれた。

祐希の笑顔をみると、元気が出た。

歌凛が死んで、一度気持ちを持ちなおせたときと同じことを祐希も考えてくれていた。


その日の放課後

私は、1人で帰っていた。

たくさんの友達に励まされたおかげで気が楽になり、前向きな気持ちになれた。


チャラリ〜ン。

「あっ。」

あのメールだった。

【一度、学校へ戻れ】


そのとき、私は考えたのだ。

お母さんが死んだとき、あのメールの言ったとおりにしたのだ。

メールの言うとおりにしなければ、お母さんは死なかったはず。

つまり今、学校へもどればなんらかの方法でお父さんが死んでしまうかも知れない。

「学校へは、戻らないでおこう。。。」

そう決意し、私はそのまま家のある方向へと進んだ。


チャラリ〜ン。

「えっ。。。」

【学校へ戻れ】

そのとき、私は一瞬悩んだ。

もし言うことを聞かなければ、私の身になりかが起こるような気がしたからだ。


「私が死んでも、お父さんには・・・。」

私は、考えを変えなかった。

たとえ、私が死んでもお父さんが生きればそれでいいと。


だが、私の考えは甘かった。


それから、私はすこし緊張しながら町を歩いていた。

そのときふと思い出した。

今日は、お父さんが早く帰ってくる日だ。

駅まで近くだから、迎えにいこうと私は駅へと少し道を変えむかった。


ケーキ屋さんの前を通り、花屋さんの前をすぎ、電気屋の前で私は

思わず足を止めた。

どのテレビでも、おなじニュースがながれていた。


「今日の午後5時半すぎ、●○駅を出発した電車が△▲駅近くで脱線したもようです。

詳しい原因はまだわかっていません。ただ、多くの死者がでたようです。繰り返します・・・」


いやな予感がした。△▲駅とは、私の200Mほど前方にある駅のことだ。

目を細めて、△▲駅の方を見るとそこには人だかりができていた。

そして、お父さんは今日はやく帰ってくるのだ。

ちょうど、いまごろ。


私は、全速力で走った。

学校の体育の時間よりもはるかに速い。

「お父さん。。。死なないで・・・・。」

必死に願った。


駅についたが、人がたくさんいてよくわからない。

そのときだった。


駅にあったテレビに一番聞きたくないニュースが流れた。

「只今、現時点の死亡者がわかりました。」

私は、はっとしてそのテレビに見入った。

お父さんの名前がでませんように。

そう、必死に願った。

「現時点で死亡が確認されたのは以下の6人です。

谷口 善也さん(13)、高田 好美さん(54)、上田 駿一さん(25)、

三好 翔さん(22)、浜田 潤子さん(34)、綿野 秀俊さん(48)。

以上の6名の方々です。お悔やみ申し上げます。」


現実は私の予想を裏切らなかった。

アナウンサーの言葉が終わると私はその場で立ちすくんでいた。

綿野 秀俊(Watano hidetoshi)。それは私のお父さんの名前だった。

そして、私はあわてて近くにいた救急隊の人にきき、お父さんのいる病院へと急いだ。


受付へいき、お父さんのいるところまで案内してもらった。


キィーーーーーッ。

重いドアがあいた。それは、いつもの数十倍にも重く感じた。


「ねぇ。。。お父さん。。なんで??約束したよね。。」

「お父さん。返事してよ。。。」

「私を1人にしないでよ。。。。。」


たくさんの言葉をかけたが、お父さんには届かなかった。

お父さんは目をつぶったまま、動かなかった。


 









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